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2025.07.18

次世代シーケンサー(NGS)にできることとは?計11の解析手法について解説

次世代シーケンサーは、分野を問わず、現代の研究現場に欠かせない解析機器の一つです。

そこで今回は、次世代シーケンサーのご紹介や、次世代シーケンサーを利用した受託サービスのご提供を通して研究現場のお困りごと解決を支援するミクセルが、次世代シーケンサーにできること、対応可能な解析手法についてわかりやすく解説していきます。

代表的な手法はもちろん、2025年現在において注目を集めているトレンドの解析手法についても紹介していきますので、ご自身の研究に次世代シーケンサーを活用したいと考えているけど、具体的にできることがわからず導入できていないという方は、ぜひ参考としてご覧ください。

次世代シーケンサーにできることは、高速での塩基配列の解読

次世代シーケンサーにできることは、高速での塩基配列の解読

次世代シーケンサーとは、DNAやRNAといった生物由来サンプルの塩基配列を解読・決定する機器の名称です。

サンプルのDNAやRNAを切断して断片化し、ライブラリ調製、増幅を行ってから同時並列的に配列を読み取り・決定していく比較的新しい解析技術を搭載していることから、従来式のサンガー法の原理を用いた機器と区別するために、この名称で呼ばれています。

そんな次世代シーケンサーの最大の特徴としては、それまでに使われてきた解析装置に比べ、処理能力が高いところが挙げられるでしょう。

サンガーシーケンス法を用いた機器では、1回のランで1万塩基ほどを調べるのが限界でした。
しかし次世代シーケンサーを使った解析では、150塩基ほどの短いリードを同時並列的に解読していくため、1回のランで数億〜数十億もの塩基を解読することができるのです。

研究現場においては、目的達成のために、まず研究対象となる生物種の遺伝情報や、特定の生命現象のメカニズムについて知る必要があるというケースも少なくありません。従来式の機器にはない高い処理能力で高速、かつ効率的に配列の読み取りと解読、決定を行える次世代シーケンサーは、分野を問わず、さまざまな研究現場において有用な装置だと言えるでしょう。

次世代シーケンサーに「できること」の具体例7つ

一般的に、次世代シーケンサーを使って行う解析のことを次世代シーケンスや次世代シーケンシング、または次世代シーケンシングの英語表記である「Next Generation Sequencing」の頭文字を取ってNGSなどと呼びます。しかし、ひと口に次世代シーケンスと言っても、研究分野や解析の目的により、具体的な作業の内容や名称は変わってくるのです。

そこで以下からは、次世代シーケンサーにできることの具体例として、次世代シーケンサーを使った解析手法のうち特に代表的な7種類の概要について、それぞれ解説していきます。次世代シーケンサーでできることを理解する上での参考として、ぜひひと通りご確認ください。

【関連記事】NGS解析(次世代シーケンス)の基礎知識|解析技術を応用してできることとは?

全ゲノム解析

全ゲノム解析とは、リファレンス配列が明らかになっている生物種の全ゲノムに対して、次世代シーケンサーでシーケンスを行う解析手法のことです。ゲノムの変異や欠損、多型など、遺伝性疾患の解析や原因の特定に役立つことから、主に医療分野において活用が期待されています。

なお全ゲノム解析は、原則50〜300塩基のショートリードを対象にシーケンスを行うため、低コストかつ短時間で実施しやすいところも特徴だと言えます。

全エクソーム解析

全エクソーム解析とは、ゲノムのうち、タンパク質のもととなるエクソン領域だけを網羅的にシーケンスし、リファレンス配列と参照して、異常や欠損など変異の有無を調べる手法です。

全ゲノム解析と同じく、主にがんや遺伝性疾患の原因遺伝子の探索といった医療の分野で活用されていますが、実施するためには、「ターゲットキャプチャ用の試薬」が必要になります。

まだターゲットキャプチャ用の試薬が開発されていない生物種に対しては、全エクソーム解析を行うことはできませんので、注意が必要です。

RNA-Seq

RNA-Seqとは、生物由来組織に存在するRNA分子の配列情報を次世代シーケンサーで読み取る解析手法のことです。厳密には、解析するRNAの種類ごとにその名称も変わってきますが、一般的にRNA-Seqと言うと、真核生物の成熟mRNAの解析を指すケースが多いでしょう。

なおRNA-Seqは、細胞に含まれるmRNAを調べ、遺伝子の発現状況を網羅的に解析・把握するトランスクリプトーム解析の代表的な手法としても知られており、医療はもちろん、創薬や農業、環境など幅広い分野の研究において活用されています。

【関連記事】RNASeq(RNAシーケンス)とは?解析原理や応用可能な研究分野等の基礎知識

シングルセル解析

検体中に含まれる微生物サンプル等を、細胞ごとに単離して解析する手法のことを、シングルセル解析と言います。各細胞の発現量や個性、不均一性などを調べたい時に用いられる解析手法であり、再生医療を含む医療や生物学、バイオものづくり等の研究において活用されています。

【関連記事】【シングルセル解析をわかりやすく解説】メリット・デメリットや基本的な原理とは

DNAメチル化解析

DNAメチル化解析とは、エピジェネティクス制御のうち、DNAをメチル化させるケースにのみ注目して遺伝子の発現メカニズムを解析する手法のことです。

遺伝子の働きを制御する仕組みに着目した解析手法であることから、主に医療分野において疾患の原因となる遺伝子の特定や、遺伝性疾患の治療法の開発等に役立てられています。

16S rRNA解析

細菌の菌種間、また個体間の違いが表れやすい16S rRNA(16SリボソームRNA遺伝子)を解析し、検体に含まれる微生物群の種類や割合を分析する手法のことを16S rRNA解析と言います。

具体的には、16S rRNAのうち可変領域をターゲットとしてPCR増幅させ、これを次世代シーケンサーで解析して微生物群の構成・比率を明らかにしていく手法のことで、医療や環境、農業など多様な分野において活用されています。

de novoアセンブリ解析

de novoアセンブリ解析とは、シーケンスで獲得できた断片的なDNA配列を、リファレンス配列を参照せずに自動的につなぎ合わせて、ゲノム配列全体を再構築していく手法のことです。

医療、環境、農業、生物多様性など幅広い研究分野において、まだリファレンスのない生物種のゲノム解読や新規遺伝子の探索に活用されています。なおde novoアセンブリ解析は、基本的に数十〜数十万塩基のリードを使ったロングリード解析を用いて行いますが、ペアエンドシーケンスでも実施される場合があります。

【要注目】次世代シーケンサーを応用してできること4選

【要注目】次世代シーケンサーを応用してできること4選

次世代シーケンサーでできることのうち、代表的な手法を理解できたら、ここからは2025年現在において研究現場から注目を集めているトレンドの手法について、確認していきましょう。

いずれも、次世代シーケンサーの解析技術を応用し、近年になってから実施が可能になった手法ばかりですので、次世代シーケンサーにできることを理解し、ご自身の研究への活用方法を考える上での参考としてお役立てください。

Olinkタンパク質発現解析

Olinkタンパク質発現解析とは、高い感度と特異性で遺伝子発現解析を実施できる手法のことです。

Olink社が開発したPEA法(Proximity Extension Assay)という独自技術を用いた解析方法で、少量の血清や血漿といったサンプルからでも多項目(最大で5,400種類)のタンパク質を同時に測定・定量することができます。

【関連記事】プロテオーム解析・プロテオミクスとは?意味や手法について解説

10×空間トランスクリプトーム解析

空間トランスクリプトーム解析とは、空間的遺伝子発現解析とも呼ばれるもので、遺伝子発現を細胞の位置情報や組織構造、他の細胞との相互関係などと関連付けて解析する手法のことです。

10x Genomics社の空間トランスクリプトーム解析(Visium Spatial Gene Expression)では、これまでのRNA-Seqによる遺伝子発現解析ではできなかった「どの細胞のどの遺伝子が、どこで、どのくらい発現しているか」というところまで、組織切片上で可視化することができます。

空間トランスクリプトームStereo-seq

先述した空間トランスクリプトーム解析を、ナノメートルスケール単位の超高解像度で行えるようにしたのが、空間トランスクリプトームStereo-seq(Spatial Enhanced Resolution Omics-sequencing)です。

DNA Nano Ballと次世代シーケンサーを使うことで、どの細胞が、どこで、どの遺伝子を発現しているのかを高い水準で解析できるようにしたもので、2025年現在、世界最高水準の空間解像度を誇る技術として注目されています。

各RNA-Seqデータ解析ツール

RNA-Seqデータ解析ツールとは、次世代シーケンサーで取得した大量のRNA配列のデータを、研究の目的に合わせて正確に、かつ効率的に解析するためのソフトウェアの総称です。

遺伝子配列の定量や差次的発現解析、機能解析まで一貫サポートしてくれるのはもちろん、QCからマッピング、発現解析、統計解析といった次世代シーケンサーで取得したデータを研究で活用するために必要な作業をワンクリック、または数ステップで効率よく進めるのに役立ちます。

なおRNA-Seqデータ解析ツールの具体例としては、Dr.tomやNovoMagicなどが挙げられるでしょう。

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今後も次世代シーケンサーにできることは増えていく見込み

ここまでに見てきたような「次世代シーケンサーにできること」については、現在もその解析精度を向上させるため、そして解析技術をさらに発展させるための研究が進められています。

またAIなど、遺伝子解析以外の用途のツールと掛け合わせることにより、疾患予測や診断支援、プロテオームやエピゲノムとのマルチオミクス総合解析など、特に医療・農業・環境・食の分野の研究において、将来的に次世代シーケンサーにできることが増えていくと期待されています。

そのため、研究現場における次世代シーケンサーの必要性・重要性は今後より一層高まっていくと予想されますが、装置の購入費用やランニングコストを考えると、研究室への導入は難しいという研究者の方も多くいらっしゃるでしょう。

ミクセルの「受託の窓口」では、そのようなお困りごと・お悩みを抱える研究者の方に向けて次世代シーケンサーを使ったさまざまなアプリケーションをご提供しています。ご自身の研究の目的や期日、予算に合わせて次世代シーケンサーでできることを知りたい、提案してほしいという場合は、ぜひ一度、私たち「受託の窓口」にもお気軽にお問合せください。

【関連記事】RNA-Seq解析の受託企業を選ぶには?比較のポイントと注意点

※記事内に登場する会社名や機材名、アプリケーション、ソフトウェアの名称等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。

研究現場のお困りごとは「受託の窓口」へご相談ください

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株式会社ミクセルは、”日本の文化と技術で長寿を喜び合える社会をつくる”ことを理念として、研究者の夢を未来へ届けるための研究支援事業やヘルスケア事業、日本の医療・介護インフラと世界をつなぐための事業を行っております。

そんな私たちが、研究支援事業として運営する「受託の窓口」では、以下のような研究現場のお困りごとを解決すべく、経験豊富なスタッフ陣が最適な受託サービスをご提案いたします。

  • 研究する上で必要なデータを解析・取得したいが、どうすれば良いかわからない
  • どこに、どんな風に頼めば欲しいデータを得られるのか、必要な予算もわからない
  • 解析を依頼したいサンプル数が少なく、他のプロバイダーに受け付けてもらえない
  • 結果をきちんと解読できるか心配なので、解析後のアフターフォローまでしてほしい

お問合せ、お打ち合わせにはオンラインで対応しておりますので、日本全国どこの研究室からのご依頼にも対応可能です。データの取得や解析、活用方法等についてお困りのことがございましたら、依頼したいアプリケーションをご検討の上、ぜひ「受託の窓口」までお気軽にご相談ください。

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