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2025.06.17

NGS解析(次世代シーケンス)の基礎知識|解析技術を応用してできることとは?

NGS解析は、近年の研究現場において基盤技術となっている代表的な解析手法の一つです。

そこで今回は、NGS解析を含むアプリケーションの受託サービスや機器のご紹介・ご提案を通して研究現場のお困りごと解決を支援するミクセルが、NGS解析の基礎知識について解説。

NGS解析の基本的な原理や強みはもちろん、NGS解析を応用した有用な解析手法の具体例や、外部の受託企業に依頼してNGS解析を進めていくためのポイントも紹介していきます。

ご自身の研究にNGS解析を活用したいとお考えの研究者様は、ぜひ参考としてご覧ください。

「NGS解析(次世代シーケンス)」とは

まずはNGS解析とは何か、その解析手法・技術の概要について改めて確認していきましょう。

NGSとは「Next Generation Sequencing」の略称であり、日本語では次世代シーケンス、または次世代シーケンシングと訳される解析手法のことです。具体的には、がん等の遺伝性疾患の判別や診断、治療法の研究等を目的に、次世代シーケンサーと呼ばれる機器を使ってDNAやRNAを含む生物由来サンプルを解析する手法全般を指す言葉であり、NGS解析とも呼ばれています。

その解析原理は、使用する機器やソフト、アプリケーションの種類によって少しずつ異なりますが、DNAやRNAを切断して「リード」と呼ばれる状態にした後にライブラリ調製とサンプルの増幅を行い、同時並列的に塩基配列を読み取り・決定していくやり方が基本となります。

例えば、ミクセルからもご紹介が可能なillumina(イルミナ)社製、MGI社製などの次世代シーケンサーにおいては、以下の解析原理が採用されています。NGS解析の概要を把握する上での参考として、ご確認ください。

  1. 解析目的に合わせた長さでサンプルDNA等を断片化し、アダプターを付加する

  2. ライブラリ調製したサンプルに、オリゴヌクレオチドとDNAライブラリを結合させる

  3. 2のサンプルをブリッジPCRを用いて増幅させ、クラスターを形成する
  4. クラスターの1反応ごとに蛍光標識したA・T・C・Gヌクレオチドを加え、取り込まれた塩基の色から塩基配列を特定する
  5. DNA鎖の伸長を阻害していたブロック基と蛍光色素を除去し、再び4の作業を行う
  6. 4~5のサイクルを繰り返して、1塩基ごとに遺伝子の配列を解読していく

【関連記事】NGSによる次世代シーケンスとは?基本的な解析原理や特徴について

なおNGSという言葉は、解析手法だけでなく、解析機器である次世代シーケンサーの呼称として使われる場合もあります。ご自身の研究にNGS解析を活用することを検討している場合は、NGSが機器の名称を指しているケースがあるということも併せて覚えておくと良いでしょう。

NGS解析の技術を応用した解析手法の例

冒頭でも述べた通り、次世代シーケンサーを使ったNGS解析はさまざまな解析手法の基盤となっており、近年では、その技術を応用した以下のような解析手法が注目を集めています。

NGS解析を研究に活用したいと考えているものの、具体的にどのような解析手法・アプリケーションの選択肢があるのかわからないという場合は、上記のようなトレンドの手法を参考に、採用する解析手法を検討してみるのもいいかもしれません。

ミクセルの「受託の窓口」で依頼可能な解析の分野・カテゴリーはこちらをチェック!

NGS解析ならではの強みや特徴について

NGS解析ならではの強みや特徴について

ここまでに見てきたような次世代シーケンサーを使ったNGS解析の手法は、2000年代に入ってから確立された比較的新しいものです。NGS解析が一般的に使われるようになる前のゲノム解析には、サンガーシーケンス(サンガー法)などの解析手法が主流として使われてきました。

サンガーシーケンスとは、サンプルDNAの鋳型鎖をPCRで増幅させておき、ここにプライマーとDNAポリメラーゼ、4塩基分のヌクレオチド、そしてジオヌクレオチドを加えてキャピラリーで電気泳動させ、断片の発光色を読み取ることにより塩基配列を解読していく手法のことです。

サンガーシーケンスは、現在でも塩基配列を解読・決定する際に使われる有用な解析手法の一つですが、1度のランで解析できるリード数が少ないという弱点がありました。対してNGS解析では同時並列的に解析を行うため、1回のランで数億〜数十億のリードをシーケンスできます。

このように、効率的かつ高速で生物由来の遺伝子配列情報を読み取り、解析できるところは、処理能力が高い次世代シーケンサーを使って行うNGS解析ならではの強みだと言えるでしょう。

「ショートリード」と「ロングリード」のNGS解析の違い

NGS解析は解析対象とするリードの長さにより、大きく以下の2種類に分けることができます。

  • 50~300塩基(bp)の短いDNA断片を解読する「ショートリードシーケンス」
  • 数千~数十万塩基(bp)の長いDNA断片を解読する「ロングリードシーケンス」

ショートリードシーケンスは、低コストでNGS解析を実施できる他、読み取り深度が深いため高解像度でゲノム領域を解析できるという強みがあります。対してロングリードシーケンスは、ショートリードシーケンスに比べるとコストが高く、エラー率も高くなる傾向にありますが、長く連続した塩基配列の解読が得意です。

NGS解析を行う際は、研究の目的や解析によって確認したいことによってショートリードシーケンスとロングリードシーケンスを適切に使い分けたり、組み合わせることが求められます。

ショートリードシーケンスとロングリードシーケンスが適した研究分野、シーンの例を以下の一覧にまとめましたので、アプリケーションを検討する際の参考としてお役立てください。

ショートリードシーケンスを活用した解析例
  • ゲノムワイドのシーケンス解析
  • SNP(単一塩基多型)解析
  • RNASeqによる遺伝子発現解析 など
ロングリードシーケンスを活用した解析例
  • ゲノムアセンブリ
  • ゲノムの構造変異の検出
  • リピート領域の解析 など

【関連記事】RNASeq(RNAシーケンス)とは?解析原理や応用可能な研究分野等の基礎知識

NGS解析を受託サービスに依頼する方法は?

NGS解析を受託サービスに依頼する方法は?

次世代シーケンサーで行うNGS解析は、さまざまな研究に利用できる汎用性の高い技術です。

そのため、研究に活用したいと考える研究者様は多いですが、次世代シーケンサーの購入費用やランニングコストを考えると、なかなか実施に踏み切れないという方が少なくありません。

そこで、NGS解析を実施する方法の一つとして検討してほしいのが、各種NGS解析を受託する外部企業に解析を依頼することです。

以下に、私たちミクセルの「受託の窓口」の場合を例に、外部企業にNGS解析を依頼する際の流れを紹介していきますので、受託サービスの利用を検討する上での参考としてご覧ください。

  1. 分野別受託カテゴリーの中から実施したい解析、アプリケーションを選ぶ
  2. お問い合わせフォームに必要事項を入力の上、送信
  3. 受託の窓口より折り返しの連絡がきたら、必要に応じて打ち合わせを実施
  4. ヒアリング内容をもとに受託の窓口より最適な解析プラン、お見積りを提示
  5. お見積もり内容に納得をいただけたら、契約書を締結、サンプルの準備へ
  6. 受託の窓口より送付するURL、またはシートにサンプルの情報を入力
  7. 6の情報と合致するようにサンプルチューブを準備し、プロバイダーへ送付
  8. プロバイダーにおいて、いただいたサンプルのクオリティチェックを実施
  9. サンプルに問題がなければライブラリーを作製し、各種NGS解析を実施
  10. 解析が完了したら、事前にお伝えした方法で解析結果を受け渡し・納品

NGS解析を依頼する受託企業の選び方は?

NGS解析を依頼する受託企業を選ぶ際に確認するべきこと、注意するべきポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。ご自身の研究の目的や期日、予算に合った受託サービス企業を探すための参考として、ひと通りご確認ください。

  • 解析の内容や条件について、事前打ち合わせに対応してくれるか
  • サンプルの要件や発送方法など、サンプルに関する条件が合うか
  • 希望する納期までに、こちらが望む形式で納品してくれるか
  • こちらの希望する種類の次世代シーケンサーで解析を実施できるか
  • こちらの希望する場所(国内または海外)で解析を実施できるか
  • 希望する内容、納品形式の解析プランの価格が予算に合うか
  • 独自の解析ツール等のオプションはあるか
  • 解析結果の納品後、どのようなアフターフォローを受けられるか

【関連記事】RNA-Seq解析の受託企業を選ぶには?比較のポイントと注意点

なお、私たちミクセルでは、近年の研究現場においてトレンドとなっているNGS解析についてもお客様の研究目的や予算、納期等の条件に合わせた最適な解析プランのご提案が可能です。

NGS解析を受託企業へ依頼することを検討している場合は、ぜひ「受託の窓口」にもお気軽にお問い合わせください。

※記事内に登場する会社名や機材名、アプリケーションの名称等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。

研究現場のお困りごとは「受託の窓口」へご相談ください

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株式会社ミクセルは、”日本の文化と技術で長寿を喜び合える社会をつくる”ことを理念として、研究者の夢を未来へ届けるための研究支援事業やヘルスケア事業、日本の医療・介護インフラと世界をつなぐための事業を行っております。

そんな私たちが、研究支援事業として運営する「受託の窓口」では、以下のような研究現場のお困りごとを解決すべく、経験豊富なスタッフ陣が最適な受託サービスをご提案いたします。

  • 研究する上で必要なデータを解析・取得したいが、どうすれば良いかわからない
  • どこに、どんな風に頼めば欲しいデータを得られるのか、必要な予算もわからない
  • 解析を依頼したいサンプル数が少なく、他のプロバイダーに受け付けてもらえない
  • 結果をきちんと解読できるか心配なので、解析後のアフターフォローまでしてほしい

お問合せ、お打ち合わせにはオンラインで対応しておりますので、日本全国どこの研究室からのご依頼にも対応可能です。データの取得や解析、活用方法等についてお困りのことがございましたら、依頼したいアプリケーションをご検討の上、ぜひ「受託の窓口」までお気軽にご相談ください。

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ミクセルは東京大学を始め、東京科学大学や、理化学研究所、広島大学など、バイオテクノロジーを研究する大学や民間企業に、世界各国のメーカーから最新の研究素材や試薬、消耗品などを仕入れ研究目的にあった商品やサービスを提供しています。